人工知能チャットボットであるChatGPTは、医療やヘルスケアをも変えるといわれています。
なかでも期待が高まっているのが、高齢化とともに需要が拡大しているリハビリテーションの分野。
リハビリ治療にChatGPTを使用するとどのようなメリットや注意点があるのか、以下にまとめてみました。
ChatGPTとリハビリテーションに関する基礎知識
ChatGPTとは?
ChatGPTとは、OpenAIが開発したGPT(Generative Pre-trained Transformer)アーキテクチャを基盤とした会話型AIです。
言語モデルとしてのGPTは、テキスト生成や理解、質問応答など多岐にわたる自然言語処理タスクをこなします。
ChatGPTはユーザーからのテキスト入力に応答し、チャット形式でスムーズな対話を行うことができます。
リハビリテーションの語源
リハビリというと、「訓練すること」だと考える人は多いかもしれません。
しかし「リハビリ」はラテン語で「re-habilis」と書き、「再びできる」、「再び人間らしく生きる」という意味です。
それが長じて、今日リハビリテーションという言葉は、「権利の回復」や「名誉の回復」といった様々な意味で用いられるようになっています。
また、その定義も時代とともに少しずつ変化しています。
一番有名な定義は、おそらくWHO(世界保健機構)による「医学的、社会的、教育的、職業的手段を組み合わせ、調整し、それらを用いて訓練あるいは再訓練することによって,障害者の機能的能力を可能な最高レベルに達せしめること」でしょう(1968年)。
高齢化とともに高まるリハビリテーション需要
高齢化に伴い、リハビリテーションの需要は世界各国で高まっています。
リハビリテーションには医師、療法士(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、義歯装具士、臨床心理士等)、看護師、保健師、ソーシャルワーカーといった様々な医療従事者がかかわります。
各患者のために、まずはリハビリテーション計画を作成し、それに沿って運動やアクティビティなどを通じた治療が行われていくわけですが、下記の点で改善が必要といわれています。
- 資格を所持する療法士が足りない
- リハビリテーション計画の構築に時間がかかる
- 治療に根気が要る
ChatGPT登場以前から期待されていたAIによる「リハビリ指導」
上記の理由から、リハビリテーションの分野では、ChatGPTの登場以前からAIへの期待が高まっていました。
例えば2017年に投稿された「ロボット理学療法士が、自宅でリハビリ指導」という記事は、小型の理学療法ロボットによるリハビリ指導について述べています。
リハビリのための病院通いは面倒だしお金もかかります。
しかし、このような理学療法ロボットがいれば、自宅でリハビリの指導が受けられ、カメラ付きなので手本となる動きまで見ることができる、とメリットを強調しています。
その他にも、「ゲーム機を用いた認知能力のリハビリ」、「歩行補助ロボットを用いた歩行リハビリ」、「VRを用いた脳機能のリハビリ」など、リハビリテーションへのAIの導入はすでに始まっていました。
ChatGPTをリハビリテーションに使用するメリット
特別な期待が寄せられているChatGPT
リハビリテーションにおいて、AI技術の中でもChatGPTに特別な期待が寄せられているのはなぜでしょう?
ChatGPTをリハビリテーションに使用すると、以下のようなメリットがあると考えられます。
- 治療の効率化とアクセスの向上
- 個別化されたリハビリテーション計画を提案
- 患者支援のカスタマイズ・インタラクティブ化
- ゲーミフィケーションで「楽しい」治療に!
1.治療の効率化とアクセスの向上
リハビリテーション治療の実際の施術は、理学療法士、作業療法士、言語療法士、義歯装具士など、訓練を受け、国家資格を所持する療法士が行います。
前述のように、高齢化とともにリハビリテーションの需要が高まっています。
そのため、療法士の数を上回る患者が連日のようにリハビリ施設を訪れ、施術まで長い時間待たされたり、予約がなかなか取れなかったりすることが問題視されています。
ChatGPTをリハビリテーションの治療プロセスに組み込むことで、患者の進捗の把握、日常的な運動のリマインダーの提供といった特定のタスクの自動化ができます。
それに加え、リハビリ計画表の作成や修正、点数の計算といった作業負担を大幅に軽減することもできます。
治療が効率化されれば、療法士の作業負担が減るため、より多くの患者に対応することができ、結果的にケアへのアクセス向上につながります。
2.個別化されたリハビリテーション計画の提案
治療ニーズは患者によって異なります。これまでは、多職種チームが時間をかけて各患者のためのリハビリテーション計画を構築していました。
ChatGPTは、個別化されたリハビリテーション計画の作成に大いに役立つと考えられます。
例えば、患者の性別、体格、病歴、機能的制限を含む現在の健康状態、嗜好、目標といったデータを入力すれば、ChatGPTは最適と思われる運動やアクティビティを提案してくれるでしょう。
新たなデータを加えることで、計画内容を修正したり、代替案を提示させたりすることも可能です。
人間の治療家の手腕にAIの視点や能力が加わることで、各患者のためのリハビリテーション計画がより深まり、優れたものになると期待できます。
3.患者支援のカスタマイズ・インタラクティブ化
人間との会話を通じたやり取りを得意とするChatGPTは、患者情報から個別化されたリハビリテーション計画を提案することが可能です。
また、それだけではなく、どのようなサポートが適しているかを学習し、よりカスタマイズされた患者支援やアドバイスを提供することができます。
また、進捗状況をモニタリングし、フィードバックすることで、患者のモチベーション維持や治療への積極的参加にも寄与すると思われます。
4.ゲーミフィケーションで「楽しい」治療に!
ChatGPTはスマートフォンやタブレット、パソコンから簡単にアクセスできるため、患者が自宅や外出先で手軽に治療に参加できるようになることも大きなメリットです。
ゲームとの相性もよく、それまでは退屈だった反復運動も、ChatGPTを組み込んでゲーミフィケーション(ゲーム化)することで、「楽しい」治療に代わります。
特にVR技術と組み合わせると、楽しさは一層増し、治療効果だけではなく患者のモチベーションの向上にもつながります。
ChatGPTでのリハビリテーション注意点
不正解な回答やストレス増大につながる回答
ChatGPTは非常に優秀なAIモデルですが、一方で不正確な回答やストレス増大につながるような回答を生成する場合があります。
患者の安全性や治療有効性を確保するには、医療従事者の監督のもとでの使用が極めて重要です。
特に怪我や運動制限、特定の病状がある患者では、他のデジタルツールと同様、ChatGPTの使用も限定的なものとすべきかもしれません。
あくまでも支援ツール
ChatGPTは人間の医療従事者の専門知識や知識に取って代わるものではなく、あくまでも支援ツールです。
リハビリテーション計画の作成においても、AIの限界を考慮し、ChatGPTが提案した計画を実施する前に必ず医療従事者が慎重に検討・承認する必要があるでしょう。
AIに不信感や抵抗感を抱く患者への配慮
AIに不信感や抵抗感を抱く患者は少なからずいます。
そのような患者の気持ちを軽視して、ただ「効果的だから」、「便利だから」と、医療側のペースでChatGPTの使用を推し進めないようにすべきと思われます。
まとめ:様々なメリットが期待されるChatGPT
このように、様々なメリットが期待されるChatGPTは、リハビリテーションを大きく変える可能性があります。
今後さらに革新的なアプリケーションが登場すれば、医療全体の変革にもつながるかもしれません。
その一方で、ChatGPTは医療従事者に取って代わるものではなく、あくまでも支援ツールとして使用されるべきであるという点も留意すべきでしょう。
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