カンボジアの9カ月貿易額が585億ドルに、前年比で2割超の伸び

こんにちは!AIフル装備! powered by みらいラボのサクラです。今日は、カンボジアの2026年1月から9月までの貿易統計を取り上げます。

商務省の報告によると、この9カ月間の輸出入の合計は584億9000万ドルで、前年の同じ期間より22.1%増えました。税関総局の集計でも570億ドルを超えており、どちらの数字でも2割前後の伸びです。

日本円に直すと、584億9000万ドルは約9兆2400億円にあたります。この記事の円換算は、1ドル=約158円(2026年11月5日時点)で計算した概算です。

この記事では、まず統計の全体像を整理し、次に輸出の中身、相手国の顔ぶれ、実務への影響の順に見ていきます。数字の出どころが2つあって食い違う部分もあるため、その違いにも触れます。

9カ月で貿易585億ドル、2割増
目次

2026年1〜9月の貿易統計の全体像

貿易の統計は、国の経済の体温計のようなものです。輸出が伸びれば工場の仕事が増え、輸入が伸びれば生産に使う原材料や機械が入ってきたことを示します。

統計を読むときは、金額の大きさだけでなく、伸び率、赤字か黒字か、どの品目や相手国が押し上げたかの3点を見ると、ニュースの意味がつかみやすくなります。

今回の発表は、カンボジアの貿易が2025年の高い水準をさらに上回るペースで進んでいることを示しています。2025年通年の貿易総額は、税関総局の集計で652億5000万ドルでした。

2025年通年の内訳は、輸出が312億8000万ドル(16.95%増)、輸入が339億6000万ドル(18.32%増)でした。2024年の554億5000万ドルから、貿易総額は17.66%増えています。

2025年の通年の伸び(17.66%)と比べると、今年の9カ月の伸び(税関総局で21.3%、商務省で22.1%)のほうが大きくなっています。成長が一段と加速している点は、今回の統計の大きな特徴です。

今回の9カ月分だけで、2025年通年の約87%にあたる570億ドル超に達しています。10月から12月の動きしだいですが、年間でも前年を超える可能性が高い水準です。

商務省が示した数字

商務省(MoC)の報告では、1〜9月の輸出入総額は584億9000万ドルで、前年同期比22.1%増でした。内訳は、輸出が274億7000万ドル(18%増)、輸入が310億ドル(26%増)です。

差し引きの貿易赤字は約35億4000万ドルで、円換算では約5600億円になります。輸入の伸びが輸出の伸びを上回ったため、計算上は前年同期より赤字が大きくなっています。

商務省の報道官を務めるペン・ソビチェア次官は、力強い輸出実績が世界の市場からカンボジア製品への信頼を得ている証しだと説明しました。あわせて、地域の貿易協定や二国間の自由貿易協定が優遇的な市場アクセスにつながっていると報じられています。

税関総局が示した数字

もう一方の税関総局(GDCE)の集計では、1〜9月の貿易総額は570億ドル超で、前年同期の469億9000万ドルから21.3%増えました。差し引きの貿易赤字は約28億3000万ドルです。

プノンペン・ポスト紙は、この数字を輸出299億2000万ドル、輸入270億9000万ドルと伝えました。ただし、輸入が輸出を上回って赤字になるという同じ記事の説明とは合わないため、この記事では総額と赤字額だけを引用します。

参考までに、税関総局の上半期(1〜6月)のデータでは、輸出が170億9000万ドル、輸入が197億6000万ドルでした。この並びからも、輸入のほうが多いのが今年の基本形だと分かります。

王立アカデミーのホン・ヴァナク氏によると、主な輸出品は縫製品、履物、旅行用品、タイヤ、部品、電気部品、家具です。主な輸入品は燃料、繊維の原材料、食品、飲料、医薬品、車両、農業機械、肥料、産業機械だといいます。

輸入に生産用の原材料や機械が多いことが、輸入が輸出を上回る理由の1つだと同氏は説明しています。つまり、輸入額が大きいことは、工場の生産能力を広げる動きの裏返しでもあります。

上半期の税関総局のデータでは、輸出は19.5%増でした。9カ月を通した商務省の輸出の伸びは18%で、伸びのペースは年の前半と大きく変わっていないことになります。

次の表は、2つの統計で確認できる数字を並べたものです。

商務省と税関総局の1〜9月の数字の比較

項目商務省(MoC)税関総局(GDCE)
貿易総額584億9000万ドル(22.1%増)570億ドル超(21.3%増)
貿易赤字約35億4000万ドル約28億3000万ドル
輸出274億7000万ドル(18%増)報道の記載に不整合あり(上半期は170億9000万ドル)
輸入310億ドル(26%増)報道の記載に不整合あり(上半期は197億6000万ドル)

2つの統計で、貿易総額には約15億ドルの差があります。それでも、どちらも前年比で2割を超える伸びという方向は一致しているため、全体の傾向を読むうえでは問題ありません。

輸出を支える縫製・履物と、伸び盛りのタイヤ

カンボジアの輸出は、長く縫製品・履物・旅行用品の3分野が中心でした。今回の統計でも、その構図は変わっていません。

一方で、今年は新しい輸出品の存在感が増しています。その代表がタイヤです。

ここでは、安定した稼ぎ頭と新しい成長分野の2つの動きを順に見ていきます。

縫製・履物・旅行用品の安定した稼ぎ

商務省によると、縫製品・履物・旅行用品・繊維(GFT)の輸出は、1〜9月で131億6000万ドルを超えました。円換算では約2兆800億円で、輸出総額の約48%、つまりほぼ半分を占めます。

内訳は、縫製品が92億3000万ドル、履物が16億6000万ドル、旅行用品・バッグが16億5000万ドル超、繊維が6億1300万ドルです。次の表に、前年同期比とあわせてまとめました。

GFT分野の1〜9月の輸出額(商務省)

品目輸出額前年同期比
縫製品92億3000万ドル6.93%増
履物16億6000万ドル8.1%増
旅行用品・バッグ16億5000万ドル超7.65%増
繊維6億1300万ドル21.53%増

ソビチェア次官は、米国、欧州、RCEP(地域的な包括的経済連携)加盟国などからの注文が安定していることを、成長の理由に挙げています。関税の変更など世界経済の課題があっても、カンボジア製品への信頼は保たれているという見方です。

なお、2025年の通年では、縫製品などの輸出は約160億ドル(15.8%増)でした。今年は9カ月で131億6000万ドルに達しており、通年の水準に向けて着実に積み上がっているといえます。

輸出総額に占める割合が約48%ということは、残る約52%を機械・電気機器、農産物、自転車、タイヤ、家具などが占めている計算になります。

この分野は、1800を超える工場や支店で約110万人が働いており、その多くは女性だと労働職業訓練省の数字として報じられています。輸出額の話は、そのまま雇用と家計の話でもあります。

2027年1月1日から、この分野の月額最低賃金は、2026年の210ドルから212ドルに上がります。

引き上げ幅は2ドルで、約1%にあたります。上げ幅は小さいものの、1800を超える工場すべてに関わるため、費用への影響は小さくありません。

賃金や諸手当の上昇は、工場にとっては費用が増える材料であり、働く人にとっては生活の下支えになります。

タイヤが前年比77.4%増の17億2000万ドルに

商務省の報告では、タイヤの輸出は1〜9月で17億2000万ドルとなり、前年同期の9億7100万ドルから77.4%増えました。円換算では約2700億円で、輸出総額の約6%にあたります。

最大の輸出先は米国で、ブラジル、カナダ、フランス、英国、オランダ、スペイン、イタリア、南アフリカ、メキシコが続きます。輸出先が南北アメリカ、欧州、アフリカに広がっている点が目を引きます。

タイヤの前年同期比77.4%増に対して、縫製品は6.93%増です。伸び率では約11倍の差ですが、金額ではタイヤ17億2000万ドルに対し縫製品92億3000万ドルで、規模はまだ5倍以上の開きがあります。

生産の拠点は、スヴァイリエン、シハヌークビル、クラチエの3州にある5つの経済特区です。稼働中の工場は8つで、自動車関連の製造業が広がっている様子がうかがえます。

新しい輸出品が育つ背景には、経済特区への企業進出があります。生産拠点が特区に集まれば、道路や港、電力といった周辺のインフラの重要性も増します。

  • ゴムの農園は全国で約45万ヘクタールある
  • 年間の生産量は約42万トンになる
  • ゴムラテックスの輸出は1〜9月で4億5500万ドルで、前年同期比25%増
  • 国内での加工が進み、国内メーカーが原料のラテックスを自社で使いやすくなった

農産物であるゴムを原料に、タイヤという工業製品を作る流れは、付加価値を国内に残す形です。報道はこれを、原料の輸出にとどまらない産業の広がりとして伝えています。

相手国から見る貿易の顔ぶれ

次に、誰と取引しているのかを見ていきます。商務省の報告で上位の相手国は、中国、米国、ベトナムの3か国です。

貿易額は、中国が175億8000万ドル(23%増)、米国が124億6000万ドル(13%増)、ベトナムが65億8000万ドル(8.5%増)でした。3か国の合計は約366億ドルで、貿易総額の6割強を占めます。

中国の伸びが最も大きく、ベトナムの伸びは相対的に小さいことが分かります。国ごとに伸び方が違うため、地域の枠組みも合わせて見る必要があります。

輸出先に絞ると、上半期の税関総局のデータでは米国が71億7000万ドルで、輸出総額の42%以上を占めました。ベトナムが25億2000万ドル、中国が9億4334万ドルで続きます。

日本は9億653万ドル(円換算で約1430億円)、カナダは6億3402万ドルで続きます。日本の読者にとっては、カンボジアが日本向けにも着実に輸出している点が確認できます。

中国との貿易と赤字の広がり

税関総局のデータでは、中国との貿易は9カ月で175億8000万ドルと、前年同期の142億1000万ドルから23.8%増えました。カンボジアから中国への輸出は15億2000万ドル(28.7%増)、中国からの輸入は160億6000万ドル(23.3%増)です。

米国との貿易は124億6000万ドル(13%増)で、中国の23%増と比べると伸びは半分ほどです。中国は輸入が中心、米国は輸出が中心という違いがあり、同じ貿易額でも中身は対照的です。

中国との貿易赤字は145億5000万ドルで、前年同期の118億5000万ドルから広がりました。円換算では約2兆3000億円にあたります。

中国からの輸入が多いことは、カンボジアの工場が中国製の原材料や部品に支えられている可能性を示します。一方で、特定の国への依存が高まる場合は、供給の途絶に備える視点も欠かせません。

対中国では、輸出額が輸入額に占める割合は9.5%で、前年の9.1%からわずかに上がりました。輸出の伸び(28.7%)が輸入の伸び(23.3%)を上回っているため、割合はわずかに改善しています。

王立アカデミーのホン・ヴァナク氏は、カンボジアの輸入は生産ラインの原材料、設備、部品が中心だと説明しています。赤字の大きさだけで悪い話と決めつけず、輸入が輸出を作る面も見る必要があります。

RCEP・ASEAN・EUという地域の枠組み

商務省によると、RCEP加盟国との貿易は357億9000万ドル(21.3%増)に達しました。このうち輸出は80億3000万ドル(8.11%増)で、輸出総額の29.25%にあたります。

この貿易額は、貿易総額の約61%にあたります。カンボジアの貿易は、いまや域内の枠組みを抜きには語れない水準です。

一方、RCEP加盟国からの輸入は277億5000万ドルで、輸出の3倍以上です。RCEPは2022年1月1日に発効した協定で、カンボジアは中国、韓国、アラブ首長国連邦との二国間の自由貿易協定も活用しています。

ASEAN域内との貿易は142億6000万ドルで16%増、EUとの貿易は約50億ドルで14%増でした。EU向けの輸出は42億8000万ドルで、輸入の7億4500万ドルを大きく上回ります。

次の表に、地域ごとの貿易額と伸び率をまとめました。

地域の枠組み別の貿易額(1〜9月)

地域・枠組み貿易額前年同期比特徴
RCEP加盟国357億9000万ドル21.3%増輸入が輸出の3倍以上
ASEAN域内142億6000万ドル16%増貿易総額の24%
EU約50億ドル14%増輸出が輸入を大きく上回る

ASEANとEUの2つを合わせた貿易額は192億9000万ドルで、前年同期の166億8000万ドルより約26億ドル増えました。ASEANは貿易総額の24%、EUは8.6%を占めます。

カンボジア科学技術大学のトン・メンダビッド氏は、供給網のつながりが深まり、ASEAN経済共同体やRCEPの利点が生かされた結果だと分析しています。

同じ貿易額でも、RCEPは輸入が多い相手、EUは輸出が多い相手という違いが見えます。原材料を域内から買い、完成品を欧州などへ売るという分業の姿が、数字に表れていると読めます。

実務への影響と今後の注目点

ここまでの数字は、日本の読者や日系企業にとってどんな意味があるのでしょうか。大きくは、調達と生産の拠点としてのカンボジアの存在感と、為替や賃金といった費用面の変化です。

同時に、貿易の伸びが特定の品目や相手国に偏っていないかを見る視点も大切です。

ここでは、現地で事業をする企業の視点と、これから確認したい点を整理します。数字を鵜呑みにせず、出どころ、基準日、為替の3つをそろえて読むことが、実務では欠かせません。

現地で事業をする企業にとっての意味

輸出の約半分を縫製・履物などが占めるため、欧米の注文の動きが景気を左右します。税関総局のデータでは、上半期の輸出の42%以上が米国向けでした。

一方で、タイヤのように新しい産業が加わると、輸出先が広がり、特定の市場への依存が和らぐ効果が期待できます。電子部品や自転車、加工した農産物といった高付加価値の分野への広がりも、報道では指摘されています。

  • 商務省と税関総局の数字を、出どころを書かずに混ぜて比べる
  • 貿易赤字の大きさだけを見て、輸入の中身(原材料や設備)を見落とす
  • 1つの伸び率だけを見て、すべての分野が同じ速さで伸びたと考える
  • 円換算の数字を、為替の変動を考えずに長く使い続ける

円換算は、為替しだいで大きく変わります。たとえば、この記事の1ドル=約158円が1円円高になると、貿易総額584億9000万ドルの円換算は約585億円小さくなります。

日本企業にとっては、調達先としても販売先としても、カンボジアの選択肢が広がっていることを意味します。ただし、為替と賃金の動きしだいで採算は変わるため、継続的に数字を確認することが大切です。

数字を読むときは、上のような読み方を避けるだけでも誤解が減ります。とくに円換算は、為替が日々動くため、基準日を必ず添えて使うことをおすすめします。

これから確認したい点

第一に、10月から12月を含む通年の数字です。2025年の通年の貿易額652億5000万ドルを超えるかどうか、最終的な発表を確認したいところです。

通年の数字が出そろえば、2026年が貿易の面でどんな年だったのか、はっきり見えてきます。

第二に、輸入の伸びが続くかどうかです。原材料や設備の輸入が増えるのは生産拡大のサインですが、燃料や消費財の輸入が膨らむと、赤字の中身が変わります。

第三に、輸出品の広がりです。縫製品の伸びは6.93%にとどまる一方、タイヤは77.4%増でした。

新しい品目が次の柱に育つかどうかが焦点になります。電子部品や自転車、加工した農産物といった分野が、タイヤに続けるかどうかを見ていきたいと思います。

  1. 2026年通年の貿易総額が、2025年の652億5000万ドルを超えるか
  2. 商務省と税関総局の輸出・輸入の内訳が、同じ基準で説明されるか
  3. タイヤなど縫製・履物以外の輸出額が、どこまで増えるか
  4. 2027年1月からの最低賃金212ドルが、工場の費用や採用にどう影響するか

まとめ

2026年1〜9月のカンボジアの貿易は、商務省の集計で584億9000万ドル(22.1%増)、税関総局の集計で570億ドル超(21.3%増)となり、どちらも2割を超える伸びでした。輸出は縫製・履物などが約半分を占め、タイヤが77.4%増と勢いを見せています。

このニュースが重要なのは、輸出の伸びが雇用や工場の稼働と直結しているからです。同時に、輸入の伸びが輸出を上回り、貿易赤字が大きくなっていることも見逃せません。

今後は、通年で2025年の水準を超えるか、輸入の中身がどう変わるか、縫製・履物以外の輸出が育つかが注目点です。為替や2027年の最低賃金引き上げも、企業の費用を左右します。

私は、数字が2つの機関で少しずつ違うこと自体が、貿易統計の読み方の勉強になると感じました。通年で2025年の652億5000万ドルを超えるか、輸入の中身がどう変わるか、縫製・履物以外の輸出が育つかを、出どころと基準日をそろえて追っていきたいと思います。

参考サイトまとめ

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